黄昏読書23 「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香
「コンビニ人間」の独特の世界観に刺激を受け、同じ作者の本を読んでみた。
小学校4年のクラスで仲が良かった3人は、中学2年生で久しぶりに同じクラスになる。しかしスクールカーストの中で、上中下に分類された3人はお互いに話すことはない。閉ざされた空間也価値観の中、思春期特有の屈折した心で、生きにくさを感じながら過ごしている。そして、誰とでも仲が良くカーストとは縁がない幼なじみの男子とカースト下位となった昔の友達
のある行動によって、主人公はこれまでとは違った世界を歩み出す。
思春期にありがちな自分は他の人と違うんだという優越感や劣等感。
拒絶されると自分の存在価値を否定されているように感じる絶望感。
スクールカーストについても生々しく描かれており、思いだしたくない過去を抉られるようで苦しくなる。
コンビニ人間同様に読後の爽快感はない。
ただ最後、主人公はこれまでの世界観を打ち破り、自分なりの世界への彩りを見つけることは共通している。
これは読む年代、心境によっては堪える本だ。
黄昏読書22 「小説8050」 林真理子
8050問題とは、高齢両親の年金で暮らす、引きこもり状態の中年成人がいる家庭のこと。
歯科医の主人公は、傍目からは羨ましがられる人生に見えるが、20歳の引きこもりの息子がいる。とあるきっかけで暴力を振るうようになり、妻や娘との関係も上手くいかなくなり、家庭崩壊へと進んでいく。
臭い物に蓋をしてきたため、今さらアクションを起こしても事態は悪化し続ける。
この家族の結末は?
実際の事件も踏まえながら、いじめ問題にも切り込んでいき、息もつかさぬ展開で、あっという間に読めました。
我が家には関係ない、その思い込みは危険。
問題が起こったら、しっかりと向き合うこと。
子供達を信じてあげることが親の役割。
黄昏読書21 「コンビニ人間」 村田沙耶香
普通とは何か?
とあるNHKの番組で著者の別の本が紹介されていて、他にも芥川賞受賞した本があったなと思い手に取った本。
気軽に読めるかなと思っていたが、全くの逆。
読み終わった後には 重さ や 怖さ を感じた。
私達は無意識のうちに、他者を「こちら側」と「あちら側」に分ける。
そして「あちら側」つまり自分にとって、普通でないと感じた瞬間に避けようとする。
また「こちら側」の普通を押し付け苦痛を与えている。
さらに自分が普通でないと排除されないように周囲と同調しようとし、特に苦しめる。
この話は主人公を救う者は現れない。
普通でないことは治らない。
かといって、「普通なんか存在しない」「ありのままの自分でいい」「自分らしく生きよう」と称賛している類の本でもない。
現実的には、人は一人で生きていけないわけで、否応なく社会と関わる必要がある。
ただ自分の意思だけは、他人から侵害されるものではない事実は大切にしたいと思った。
あと他人に普通を強要しないよう気をつけること。
本書のメッセージは読み取りにくく、読者に委ねられる。
もう一度読むのはしばらく無理と思わせる稀有な本。
黄昏読書20 人新世の「資本論」 斎藤幸平
ポスト資本主義を考えよう。
資本主義は中核が勝ち続け、周辺が負け続けるシステムである。
また資本主義は人間だけでなく、自然環境からも掠奪するため、負荷を外部に転嫁することで、経済成長を続けていく。
結果、行き過ぎた資本主義によって環境問題、格差問題が生じた。
形だけのSDGsでは解決には至らない。
これからは、脱資本主義、脱成長による持続可能で「公正な社会」を考えないといけない。
そのためには資本主義によって解体されたコモン<共>を再建する必要がある。
水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指す。
貨幣という利益追求から逃れ、エッセンシャルワークを中心とした生活基盤や、環境という価値を判断基準にした生き方をする。
3.5%の人が立ち上がれば、世の中を変えられるという。
その1人として加わる勇気と決断をするかどうかにかかっている。
黄昏読書19 「われら地球滅亡学クラブ」 向井 湘吾
小6の息子が図書館でふと見つけた本。
絶賛し、ススメられたので何気に読む。
高校生になった碧と玉華は地球滅亡学クラブを結成している。
100日後に妖星デルタが地球に衝突して、地球は滅亡するからだ。
しかし世界の指導者達は数年前からその事実に気づいており、一部を乗せるロケットを開発していた。
その事実公表後には、世界暴動が起き、日本も反政府組織が活動する。
インターネットは遮断され、電力やガソリンは不足し、戦後のような生活を送る人々。
教師の失踪が相次ぐ中、新たな部員とともに地球滅亡の日まで、死に方を考える。
そして、その時が近づく...
読んで思った事は、大人の役割は何か。
未来を楽しみにしていた子供の夢は突然、途絶える。
しかし、何のためにあるか分からない授業を受け、部活に汗を流す子達がいる。
その一方、大人達は略奪や保身、暴動を扇動する。
奇しくもコロナのデルタ株と名前が重なる中、我慢しているのは子供達だよな。
もしかして、息子はそれを伝えたいのか?
読書を通じたコミュニケーション。
思春期に入っていくだろう子供とのツールになればいい。
黄昏読書18 「風に恋う」 額賀 澪
小6の息子オススメの本。
高校1年の主人が吹奏楽に打ち込むいわゆる青春小説。
中学時代に燃え尽きた基は幼馴染の玲於奈と名門校の吹奏楽部に誘われるも乗り気にならない。そう、名門校は今は落ちぶれていた。しかし、かつて全国大会に出場した時代の部長であり、基の憧れであった瑛太郎がコーチとして帰ってきた。基は入部することとなり、一年生ながら部長に任命される。先輩との確執、勉強との両立、親の介入などを乗り越えて、全国大会に出場できるのか。
大人になって病んだためか、基より瑛太郎に感情移入した。
高校時代の栄光が忘れられず、教員試験に落ち続け、フリーターとなった彼は、顧問の誘いで母校のコーチになる。子供達への指導とともに、瑛太郎の心の中にある蟠りは溶けていき、彼自身が成長していく。
教員になる意味を見つけ、再び輝き始める。
瑛太郎はきっといい先生になるし、こういう先生に息子達も出会って欲しい。
子供は信頼できる大人に導かれる。
息子に誰に1番感情移入した?と聞くと、
「瑛太郎」
自分の小6時代より、よっぽど大人だわ。
これからも息子がオススメする本は読んでみよう。
黄昏読書17 「育ちがいい人だけが知っていること」 諏内えみ
「育ち」は自分で変えられる
ある時人を見て、いい佇まいだな、オーラだなと思い、身につけたいと思っていた時に、ベストセラー棚で見つけた本。
・お呼ばれした時の靴の脱ぎ方
・尊敬語と謙譲語を使い分ける
・暦に敏感になる
・本物を普段使いする
・手土産の渡し方
・お箸は3手で扱う
・お料理は迷ったら左手前から
などなどたくさん簡潔に書かれていて分かりやすい。
知ろうとして、実践して、にじみ出る「育ちの良さ」を身につけて、子供たちにも将来、恥をかかせないようにしないと。