黄昏読書10 「デジタル化する新興国」 伊藤亜聖 

「デジタル化の先にあるのは繁栄か、それとも監視社会の到来、雇用の二極化、そして日本の衰退か」

 

前回世界史の本を読んで、これからはデジタル化が鍵となると思い、本書を手に取った。(https://tasogaredokusyo.hatenablog.com/entry/2021/01/24/211705)

 

デジタル経済をアプリケーション層/ミドルウェア層/物理層に分類しており理解しやすい。

新興国は規制や既存のインフラが未整備であるがゆえに、独創的なキャッシュレス決済機能などのアプリが発達している。

飲めない水、不衛生な住宅であっても、スマホを持って決済している。

現金支払が多い、日本よりある点においては発達している。

これが、今世界で起きていること。

 

その一方、プラットフォームはGAFAを利用しており、デジタルインフラは先進国の支配が続く。

中国はプラットフォームもアリババやテンセントなど確立させており、その危険性を認識している。

日本はどっちつかずであり、今後の立ち位置が曖昧であると指摘している。

世界でも日本は最も少子高齢化が進んでいる社会で、世界のモデルケースとなる必要があり、システムや価値観を輸出できるようになることが日本のプレゼンスを示す。

現在の国民皆保険介護保険、地域包括ケアの考え方は間違っていないと思うが、そこにデジタル化を進めていかないといけないと思う。

 

「高齢者はスマホを扱えないので、集団で集まって体操、紙やDVDを使う」、今はいい。

でもそれがあと10年続くとも思えない。

 

スマートホームやスマートシティーウェアラブルさらにはインタラクティブのデバイスを用いて管理していかないといけない(ただ過剰な監視に至らないよう配慮が難しい)。

 

もう一点、今後の仕事は、極論的にはデジタル基盤の担い手である「IT人材」、終拠点からエンドユーザーへ荷物を運ぶ物流サービスを担う仕事に象徴される「ラストワンマイル」の二極化になる可能性があると指摘している。

特殊な技能が必要とされない「ラストワンマイル」的な職業は社会保険制度も不安定である。

非正規職員以上の不安定性があり、社会の分断の元凶にならないか心配しつつ、息子達の将来のために親として考えることでもある。

 
理学療法士にとっても他所事ではない。

理学療法がラストワンマイル的な仕事であると社会から認識されれば、地位は低くなり賃金も下がってしまう。

治療知識や技術はもちろん重要であるが、同じレベルでIT人材の育成と登用が必要である。

 

個人的にはリハ医主導の企業とのデバイス開発、当大学の健康科学分野組織との共同研究、機械学習を用いた新たな評価ツールの開発に関わっており、その中で理学療法のデジタル化に努めていきたい。

 

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琵琶湖湖畔にて

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